エンピリカルのカクテルアプローチ
茶葉のフレーバーや海藻の旨味で、スピリッツの持ち味を膨らませる
――野村空人のエンピリカルカクテル
エンピリカル日本発売記念企画
「エンピリカル」の日本発売を記念して、2種の「エンピリカル」を用い、国内のトップバーテンダーにカクテルとして昇華してもらった。今回は、ドリンクコンサルタント会社「ABV+」の代表を務める野村空人さんによるカクテルを紹介してもらう。(取材撮影:東京・日本橋兜町「tea&library bar 青淵-Ao-」)
「『AYUUK』は食欲を刺激するスモーキーな食前酒に、『PLUM』は軽やかに締めるデザート酒に。
新しい立ち位置に立つ2種のエンピリカル」
今回、カクテルをつくってくれた野村空人さんに、「AYUUK」と「THE PLUM, I SUPPOSE」の2種のエンピリカルをしいてたとえるなら、どんなスピリッツが思い浮かぶか尋ねてみた。
「『AYUUK』は、いぶりがっこのような燻製感と旨味とだし感があって、ほのかな辛味もある。その点では、メスカルっぽいニュアンスを感じました。でもイコールではありません。他にはないユニークなスピリッツなので、カクテルに落とし込む際はどこまで手を込めて、どんな着地点を狙うかが悩みどころでした。
一方、『THE PLUM, I SUPPOSE』は、最初に香を嗅いでみると、一瞬、ニュースピリッツのようなエタノール香を感じたのですが、口に含むとまさにプラムや梅のよう。実の真ん中に存在感のある種がどんとある“ストーンフルーツ”を思させました。フルーツブランデーやグラッパに共通するような、芳醇なフルーティーさをしっかり感じられましたね。アグリコールラムやジンといったホワイトスピリッツに置き換えられると思います。ただ、アルコール度数32%と、カクテルの主役に用いるスピリッツとしては低めなので、そこをどう補完するかもポイントです」
味わうタイミングやシチューエーションについてはどうだろう。野村さんは、こんな意外な提案をしてくれた。
「『AYUUK』は、このスモーキーさが食欲を刺激してくれそうです。少量を食前酒的に飲んでもよさそうです。『THE PLUM, I SUPPOSE』は、低アルコールでいて食後に口をさっぱりしてくれそうです。新しいタイプのデザート酒として、軽やかに締められるのではないでしょうか」
海藻で旨味とボディ感を補強して、エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」のカクテル
「Manhattan, I SUPPOSE」(マンハッタンっぽいんだよね)が誕生
「スピリッツ単体だと、すごく独特なフレーバーがあるのにボディ感が軽い印象でした。そのスポッと抜けているところを埋められるものとして思い浮かんだのが、海藻です」
野村さんは、カクテルへのアプローチをそう語る。海藻は、以前、働いていた『FUGLEN』の本拠地、ノルウェーのスタッフがよく使っていていた素材で馴染みがあったと言う。甘味のあるライウイスキーに浸けて旨味を引き出す手法を取り入れた。
さらに、ハーブやスパイスを漬け込んだ白ワイン“コッキ アメリカーノ”を加えることで旨味と甘さ、ボディの厚みを補強する。
完成したカクテルは、エンピリカルが持つフルーティな香りが冴えつつも、やわらかな飲み口。スイート マンハッタンのようでいて、はるかに軽やかでモダンな仕上がりに。
Manhattan, I SUPPOSE
レシピ
- エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」 40ml
- アペリティフワイン“コッキ アメリカーノ” 20ml
- アカハタ(海藻)を漬けたライウイスキー“テンプルトン ライ”(ジップロックに、ライウイスキー100mlと乾燥したアカハタ2.5gを入れ、60℃で2時間煮る)8ml
- レモンピール1片
つくり方
- ミキシンググラスに、エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」、“コッキ アメリカーノ”、アカハタ(海藻)を漬けた“テンプルトン ライ”、氷3個ほど(分量外)を入れ、30回ほどステアする。
- グラスに注ぎ、レモンピールを振りかけてグラスの中へ落とす。
赤いお茶、ハイビスカス、カシス。「AYUUK」主原料・チリの「赤」のトーンでつなぐ
名前のとおり、赤を主張したカクテルである。
「『AYUUK』のメインとなる原料のひとつに唐辛子があります。スピリッツは、もともとは赤い色を持つ唐辛子を燻して黒くしたイメージなので、カクテルは本来の赤に合わせてみたいと思いました。色を合わせると味も合う、というのが僕の持論で、カシスや梅酒が思い浮かびました。お茶を副材料にすることは単に水ではなくフレーバーウォーターを加えるようなものでぐっと飲みやすくなります」
お茶のカクテルの開発を積極的に手掛けている野村さんが選んだ茶葉は、ハイビスカスローズヒップティーに、2011年に品種登録された日本初の「赤い日本茶」である“サンルージュ”。それを煮出す、漬け込むといった手法で取り入れる。
ほんの1ダッシュのアブサンを加えるのは、「個性の強いエンピリカルには、同じく個性の強い薬草酒を」との考えから。アニスのほのかなフレーバーも生き、狙った色味と味わいがぴたりと決まる。
Inside of Red
レシピ
- エンピリカル「AYUUK」30ml
- ハイビスカスローズヒップティー(ハイビスカスローズヒップティーのティーバック1パックを、100mlの湯で20分煮出す)20ml
- 茶葉“サンルージュ”を浸けた梅リキュール“星子”(“星子”1本・720mlに対して、茶葉“サンルージュ”15gを1日浸ける)10ml
- カシスリキュール 1tsp
- アブサン 1ダッシュ
- オレンジピール 1片
つくり方
- ロックグラスに、エンピリカル「AYUUK」、ハイビスカスローズヒップティー、茶葉“サンルージュ”を浸けた梅リキュール“星子”、カシスリキュールを入れ、氷を加え、アブサン1ダッシュを振りかける。
- 10回ほどステアし、オレンジピールを振りかけてグラスの中へ落とす。
野村空人さんのカクテルメイキング動画
野村空人(のむらそらん)
1984年、東京都生まれ。バーテンダー、ドリンクコンサルタント。21歳で渡英し、ロンドンで7年に渡りバーテンダーの経験を積む。帰国後、富ヶ谷「Fuglen Tokyo」でバーマネージャーを務めた後、ドリンクコンサルタント会社「ABV+」を立ち上げる。カクテル開発やケータリングなど幅広く活躍。直近では、本とお茶が愉しめる東京・日本橋兜町「tea&library bar 青淵-Ao-」をプロデュースし、お茶や漢方を使ったカクテルの開発やスタッフのトレーニングを手がける。
取材協力:tea&library bar 青淵-Ao-
(ティーアンドライブラリーバー アオ)
東京都中央区日本橋兜町3−5 K5ビル 1階
Tel: 03-5962-3485
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