エンピリカルのカクテルアプローチ

造り手の探求心とストーリーの解釈を、
カクテル創造の源にする
――鈴木敦のエンピリカルカクテル

エンピリカル日本発売記念企画

「エンピリカル」の日本発売を記念して、2種の「エンピリカル」を用い、国内のトップバーテンダーにカクテルとして昇華してもらった。今回は、東京・渋谷「The Bellwood」の鈴木敦さんによるカクテルを紹介してもらう。

自身のバーで、すでに海外で販売されているエンピリカルを取り入れている鈴木敦さん。今回、日本初リリースとなった「THE PLUM, I SUPPOSE」と「AYUUK」の2種を含め、エンピリカルのことをこう語る。
「世界的に著名なレストランの出身である造り手のラースとマーク·エミルの二人が、徹底的にフレーバーにこだわって開発したプロダクトで、今までになかった香りや味わいを表現している点がとても新鮮です。

それだけでなく発酵や蒸留というプロセスのこだわりやその探求心の強さは圧倒的なものがありますし、目指しているものをきちんと感じられる仕上がりになっているのがすごいと思います。完全に新しいジャンルのスピリッツと言えますね」
2種のエンピリカルの印象をもう少し詳しく聞いていこう。しいてたとえるなら、どんなスピリッツに近いのだろうか?
「端的に言い表すことは難しいのですが、『THE PLUM, I SUPPOSE』は、すごくドライな梅酒とアプリコットとアグリコールラムを混ぜた感じでしょうか。スピリッツ単体でもすでに複雑な味わいなので、カクテルにする際はあえてシンプルに仕上げます。ソーダやトニックウォーターで割るだけでも、エンピリカルの個性を味わえると思いますし、柑橘全般との相性もいいですね。『AYUUK』は、スモーキーでいてチリの“青い感じ”が印象的です。メスカルに近いかもしれません。でも実際にカクテルでメスカルと合わせてみると、メスカルのフレーバーが勝ってしまいました。こちらもカクテルにする場合は、複雑にしすぎない方がよいかと感じました。ごくシンプルに味わうなら、ロックであるいはコーヒーベースのお酒に垂らすのもよいと思います」

「お客様にドライでビターなカクテルを」とリクエストされたときに、ちょっと珍しいものに仕上げたく思い浮かんだのが『THE PLUM, I SUPPOSE』でした。即興で合わせてみると、これがぴったりとはまりました。シェリーのフィノでドライなキレ味を、ハーブやスパイスを漬けた白ワインの“コッキ アメリカーノ”で甘味と苦味を。そして“チナール”で味の深みの後押しを。グレープフルーツのピールは、ドライでいて爽快感も与えてくれます」
狙うのはエンピリカル『THE PLUM, I SUPPOSE』が持つ“プラムっぽい”フレーバーと香りを立たせること。バンブー的な要素でまとめながらも、『PLUM』のフルーティーさとグラスをまとう香りが華やかに冴え、全体を軽やかに底上げしている印象だ。

DRY & BITTER, I SUPPOSE


レシピ

  • エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」:25ml
  • アペリティフワイン“コッキ アメリカーノ”:20ml
  • シェリー(フィノ): 20ml
  • 薬草系リキュール“チナール”:5ml
  • グレープフルーツピール:1片

つくり方

  1. ミキシンググラスに氷を入れて冷やしておく。
  2. グラスに、エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」、シェリー、“コッキ アメリカーノ”、“チナール”を入れてかき混ぜる。
  3. 1の水を切り、2を注いでステアする。
  4. グラスに注ぎ、グレープフルーツピールを振りかける。

エンピリカル『AYUUK』の主な原料は、メキシコオアハカ州の少数⺠族ミヘーの⼈々が、海抜2700メートルの地で栽培した唐辛子“パシーヤ”で、彼らは自分達の事を「Ayuuk(アユーク)」”山の言葉を話す人”と呼んでいる。枝上で完熟すると部分的に乾燥していき、熟し終わると粗削りでスモーキーな⾹りを燻らせる。鈴木さんのカクテルのアプローチの軸にあるのは、エンピリカル『AYUUK』のアイデンティティ。その要素として、アユーク達が一息つく際に飲むコーヒーカクテルをイメージした。
「コーヒーは、日本のバーの前身ともなった明治後期から大正期の「カフェー」をコンセプトとする『The Bellwood』と切り離せないアイテムで、名古屋の『ボンタイン珈琲』にオリジナルブレンドをつくってもらっています。南米産のコーヒーと『AYUUK』を合わせ、生産地の高地の霧がかった風景や、ともすると南米の呪術的なマジック感を、スパイスの香りをまとった冷気で演出しています」
スパイスとオレンジのフレーバーも利かせた“アロマフォグ(香る霧)”にすることで、余計な水分は加えず、純粋に香りだけをまとわせられる効果もある。コーヒーマンハッタンのようでいて、抜群の存在感。カウンターに差し出されたら、一気に視線を集める一杯である。

AYUUK’S COFFEE


レシピ

  • エンピリカル「AYUUK」:30ml
  • べルモット“マンチーノ”(ロッソ):20ml
  • コールドブリュー コーヒー(水15に対して、オリジナルブレンドの豆1を入れ12時間常温で抽出したもの):20ml
  • ガムの木の樹液のリキュール“スキノス・マスティファ”:5ml
  • チョコレートビターズ:2ダッシュ

<アロマフォブ用>
ドライアイス 適量
オリジナルスパイスの蒸留水 適量

つくり方

  1. ミキシンググラスに氷を入れて冷やしておく。
  2. グラスに、エンピリカル「AYUUK」、コールドブリュー コーヒー、“マンチーノ”、“マスティファ”、チョコレートビターズを入れて、軽くかき混ぜる。
  3. 1の水を切り、2を注いでステアし、グラスに注ぐ。
  4. ミキシングティンに、オリジナルスパイスの蒸留水とドライアイスを入れ、“アロマフォブ”(冷気)を出し、その冷気のみを3のグラスに注ぐ。
『DRY & BITTER, I SUPPOSE』

鈴木 敦(すずき あつし)


1984年、東京都出身。高校卒業後、都内バーの経験を経て、24歳でニューヨークへ。名バー「Angel’s Share」で、現「SG Group」ファウンダーの後閑信吾氏と出会う。さらにロンドン、カナダでバーテンディングを研鑽。2013年にはトロントで開催された「Buffalo Trace Cocktail Competition」で優勝。2017年、「CHIVAS Masters」世界大会優勝。2018年、「Bellwood Experiment Inc.」を設立し、2020年、東京・渋谷「The Bellwood」を開店。


The Bellwood
東京都渋谷区宇田川町41-31
Tel: 03-6452-5077

category:

エンピリカルのカクテルアプローチ

Tags:

Comments are closed