エンピリカルのカクテルアプローチ
すでにカクテルのようなスピリッツだから、副材料はごくシンプルに
――鹿山博康のエンピリカルカクテル
エンピリカル日本発売記念企画
「エンピリカル」の日本発売を記念して、2種の「エンピリカル」を用い、国内のトップバーテンダーにカクテルとして昇華してもらった。今回は、東京・新宿「Bar BenFiddich」の鹿山博康さんによるカクテルを紹介してもらう。
「2種のエンピリカル『THE PLUM, I SUPPOSE』と『AYUUK」』は、すでにカクテルのような完成した味わい。
造り手の個性と想いもこのボトルに詰まっています」
エンピリカルの造りの中心人物、ラース・ウィリアムスとかねてから交友のある鹿山さん。「noma」でリサーチ&ディベロップメントのトップを何年も務めたラースは、日本のカクテル事情やボタニカルにも強い関心を持ち、「Bar BenFiddich」だけでなく、鹿山さんの畑にも遊びに来たことがあるという。
「道端の草を勝手に口に入れるところは、僕と似ているかもしれません(笑)」。
鹿山さんは何年も前から「エンピリカル」の存在は知っていたものの、エンピリカルのボトルの封を開けて飲んでみたのは今回が初めてだ。感想をこんな風に語る。
「『THE PLUM, I SUPPOSE』は、プラムの種の中身である仁の部分を使っていて、アマレットのようなニュアンスを感じました。かといってリキュールではない。『AYUUK』は、メスカルのようなスモーキーさがありつつ、多重的にいろんなエッセンスが重なって凝縮した複合的な味わい。両方ともすでに完成されたカクテルのような印象でした。カクテルをつくる際に感じたのは、難しさというより個性のあるものをどう生かすかというわくわく感。これまでのスピリッツにカテゴライズされていない固有の物、という感じですね。むしろお客様には『ラースの想いが詰まったスピリッツです』と伝えやすいかもしれません」極手軽な飲み方として、鹿山さんはトニックウォーターで割ってみることを提案する。
「酸・甘に苦という味の要素が加わり、カクテルとして成り立ちます。マティーニに代表されるような、クラシックカクテルに置き換えても面白いですね。とくにゴッドファーザーなら、『THE PLUM, I SUPPOSE』とアマレットを合わせてダブルコンソメカクテルのように使ってみるのもよさそうです」
“バラ科”をコンセプトに麹でつなぐ、エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」のマティーニ
キンと冷えたグラスの中に咲く、美しい桃の花。カクテル名は「ロゼシア ジャパニーズ マティーニ」という。ロゼシア=Rosaceaeとは「バラ科」の意味。スピリッツに使われるプラムの(仁)も、そして自身の畑に咲く桃の花もまたバラ科であることからそう名付けた。 「カクテルのイメージはマティーニのツイストで、3、4年前からつくっている“酒マティーニ”。日本酒を使ったものです。『THE PLUM, I SUPPOSE』を口に含んだとき、膨らみや余韻に、原料のひとつである大麦麹のニュアンスを感じました。エンピリカルに麹を使っているのも、ラースが来日し、日本で影響を受けたからこそ。ならばと、日本酒、みりん的に加える保命酒と麹つながりで副材料を合わせてみました」 マティーニスタイルで仕上げるテクニック的な要素としては、「ステアの際は、液体と氷の温度を一体にして練るイメージです」。 溶けていくほどに香りも姿も開いていく桃の花を愛でながら、バラ科の世界にとっぷり浸れる。
ロゼシア ジャパニーズ マティーニ
レシピ
- エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」:45ml
- 日本酒“稲とアガベ prototype03(自然栽培ササニシキ/精米歩合90%/6号酵母添加生もと”:20ml
- ハチミツ:適量
- 薬味酒“保命酒”:1tsp
- 桃の花の氷(桃の花を入れた自家製丸氷):1個
つくり方
- グラスに氷を入れて冷やしておく。
- ワイングラスに、エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」、日本酒、薬味酒を注ぎ、スワリングする。
- 氷を入れたミキシンググラスに2を注ぎ、40回ほどステアする。
- 1のグラスの氷を捨て、3を注ぎ、桃の花の氷を加える。
エンピリカル『AYUUK』のチリのフレーバー×フレッシュなさとうきびジュースで、
世界でひとつのフレッシュダイキリに
続いて、鹿山さんが取り出したのは、「コロナ禍の休業中に衝動買いしたんですよ」という圧搾機。慣れた様子で、おもむろに生のさとうきびを手動の圧搾機にかけると、瞬時にカウンターは青い香りに包まれ、瑞々しいジュースが搾られた。
「『AYUUK』が持つチリのフレーバーと、新鮮なさとうきびの甘さが合うんです。砂糖ではなく、ね。『AYUUK』にはすでに多重的な味わいがあるので、副材料はシンプルに、ボリューム感を補うイメージです」
搾りたてのさとうきびのジュースは、青く、淡い甘味で、柔らかさもある。
「シェイクはエアレーションをするように、空気を膨らませるイメージで。僕は、自分が使い慣れていてジャパニーズバーテンダーらしいスリーピースのシェイカーでつくります。ふわっと軽い味わいに仕上げるのが狙いです」
アユーク フレッシュダイキリ
レシピ
- エンピリカル「AYUUK」:45ml
- ライムジュース:1tsp
- さとうきび(約25cm)の搾り汁: 60〜75ml
つくり方
- グラスに氷を入れて冷やしておく。
- 圧搾機にさとうきびを通して、ジュースを搾る。
- シェイカーに、1とエンピリカル「AYUUK」、ライムジュース、氷を入れてシェイクする。
- 1のグラスの氷を捨て、3を注ぐ。
鹿山博康さんのカクテルメイキング動画
鹿山博康(かやま ひろやす)
1983年、埼玉県生まれ。
2013年7月、バー「Bar BenFiddich」を開業。アブサンやジンなど薬草酒の揃えが厚く、外秩父の麓・ときがわ町にある自身の畑で採取したボタニカルをカクテルに多用する。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。ウィリアム・リード・ビジネス・メディア主催、 アジア最⾼のバーアワード「AsiaBest Bar 50」においては、2016年より6年連続選出。2021年は、自店最高上位となる9位に選出される。
Bar BenFiddich(バー ベンフィディック)
東京都新宿区西新宿1-13-7 大和家ビル9階
Tel: 03-6258-0309
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